関連書籍刊行のお知らせ『中世ヨーロッパ』

ウィンストン・ブラック(大貫俊夫監訳)『中世ヨーロッパ ファクトとフィクション』(平凡社)が刊行されました。
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中世ヨーロッパに関する名だたるフィクションを11点取り上げ、各章ではまず①フィクションの概要、②フィクションの成立過程、③フィクションを支える中世や近代に由来する史料が扱われ、フィクションがどのように構築されてきたかが丁寧に説明されている。それに対して、後半では④実際に起きたこと、そして⑤その認識を支える一次史料が配置され、細心の研究に基づく、より正確な歴史理解が明らかにされる。こうした堅固な構成こそが本書の魅力である。

(訳者あとがきより抜粋)

第10章「中世の人々は魔女を信じ、火あぶりにした」(前田星訳)では、中世風ファンタジーなどに登場する魔女イメージを、一次史料を用いながら検証していきます。
ぜひ手に取ってご覧ください。

関連論文刊行のお知らせ

魔女関連の論文刊行情報です。

大黒俊二「浮動するエゴ、もう一つのエゴ、創られるエゴ―魔女ベレッツァ・オルシーニの審問記録と手記(一五二八年)より」長谷川貴彦編『エゴドキュメントの歴史学』岩波書店、2020年、19-44

2018年1月に行われた第12回学際魔女研究会での報告内容が基になっているそうです。

第16回研究会

12月21日、近畿大学で第16回研究会が開催されました。

報告者急病のため、予定されていた報告からタイトル、報告者が変更となりました。
報告の要旨は以下の通りです。

「名誉をめぐる攻防―「魔女」の名誉棄損訴訟と司法利用の戦略」小林繁子(新潟大学)
 本報告は刑事裁判としての魔女裁判ではなく、魔女の嫌疑をかけられた者が反撃する機会として名誉棄損訴訟を利用したことを取り上げた。「魔女」「妖術使い」といった悪口は名誉が貴重な社会資本であった近世において看過しえない侮辱だった。これに対抗する手段として①水審問、②簡易的罰金手続き、③教会法上の雪冤宣誓、④名誉棄損訴訟といった選択肢があった。これらの方法を比較検討し、17世紀に行われた名誉棄損訴訟の事例を紹介した。そこから、魔女という絶対的他者を作り出す魔女裁判に至ることを名誉棄損訴訟によって回避し、背景にあった紛争をめぐっても当事者が和解に至る方法があったことを提示した。課題としては、魔女裁判件数の増減に名誉棄損訴訟のそれは連動したのかしなかったのか、「司法利用」の観点から臣民がどの裁判所に訴え出るのか、それをどのように選択しているのかをより多くのケースから検討する必要性、「魔女」以外の名誉棄損訴訟との比較の必要性、合理的な説明に終始するのではなく魔術的世界観を含め検討する意義などがディスカッションの中で指摘された。

*予定されていた報告者急病の連絡を受けての代理報告。これは2018年9月に早稲田大学で行われたヨーロッパ中世・ルネサンス研究所のシンポジウムで報告したのと同一内容のものであり、論文集所収の論文の形で刊行されています。小林繁子「名誉をめぐる攻防:「魔女」の名誉棄損訴訟と司法利用の戦略」松本尚子編『法を使う/紛争文化』(国際書院、2019年)、89-112頁。

次回研究会は2020年4月頃を予定しています。

第16回学際魔女研究会のお知らせ

以下の要領で、研究会が開催されます。どうぞ奮ってご参加ください。

日時    2019年12月21日(土)14:00~17:00(開場13:30)
場所    近畿大学東大阪キャンパスEキャンパスB館10階1007演習室
発表者   小川佳章(同志社大学)
発表題目  『ルカノール伯爵』における魔術的なもの:14世紀カスティーリャの俗人作家に関する一考察

第15回研究会

7月6日、愛知県立大学サテライトキャンパスで第15回研究会が開催されました。
報告の要旨は以下の通りです。

「近世における法学と神学の交錯」前田星(北海道大学法学研究科)
近世ヨーロッパにおいて生じた魔女裁判は、長い間法制史においては等閑に付されてきた。その原因のひとつは、魔女と魔女裁判にまつわる非合理的な側面が、「脱宗教」を特徴とする近代法学的立場からは荒唐無稽なものに見えたからである。しかし、近世において「宗教的な」諸要素は、魔女裁判の手続にまで深く影響を与えていた。本報告では、一人の実務家の手になる裁判マニュアルを通じて、これらの要素が実際にどのように法的な手続に影響を及ぼしえたのかを具体的に明らかにするとともに、近世の専門家という観点から、魔女裁判をどのように論じうるのかという展望を提示した。

次回研究会は12月頃を予定しています。

第15回学際魔女研究会のお知らせ

以下の要領で、研究会が開催されます。どうぞ奮ってご参加ください。

発表者:前田星(北海道大学法学研究科)「近世における法学と神学の交錯」

日時:2019年7月6日(土)14:00~17:30(開場13:30)
場所:愛知県立大学サテライトキャンパス
〒450-0002 名古屋市中村区名駅4丁目4-38
(愛知県産業労働センター「ウインク愛知」15階地下街のユニモールを東方面に歩いて行くと右手側にあります。JR、地下鉄、名鉄、近鉄「名古屋駅」徒歩約5分)

        

関連論文刊行のお知らせ

魔女関連の論文刊行情報です。

黒川正剛「西欧近世における「呪者の肖像」―高等魔術師と魔女」、川田牧人/白川千尋/関一敏編『呪者の肖像』臨川書店、2019年所収。

田島篤史「15世紀アルプス地域の魔術的慣習と悪魔学」、小野賢一編『帝国と魔女で読み解くヨーロッパ』愛知大学人文社会学研究所、2019年所収。

第14回学際魔女研究会のお知らせ

下記の通り、研究会を開催します。奮ってご参加ください。

日時:2019年3月20日(水)13:30~17:30 (開場13:00)
場所:関西大学千里山キャンパスキャンパス 第2学舎 D301教室
http://www.kansai-u.ac.jp/global/guide/mapsenri.html(2-3の建物の3階になります)
(当日は関西大学の卒業式という関係上、立て看板など案内表示ができません。ご注意ください)

第1報告:合評(13:30-15:30)
 黒川正剛『魔女・怪物・天変地異―近代的精神はどこから生まれたか―』筑摩書房、2018年
 評者:小林繁子(新潟大学)

第2報告:研究発表(15:40-17:40)
発表者:村上司樹(摂南大学・滋賀県立大学・桃山学院大学・立命館大学)
 題目:神判・魔法・慈悲―中世初期北イベリアの宗教文化―

第13回研究会

あけましておめでとうございます。今年も魔女研をよろしくお願いします。

昨年11月25日、愛知県立大学サテライトキャンパスで第13回研究会が開催されました。
各報告の要旨です。

第一報告
「1692年セイラムの魔女裁判とその遺産」久田由佳子(愛知県立大学)

 1692年、北米マサチューセッツ湾植民地のセイラム・ヴィレッジ(現マサチューセッツ州ダンヴァース)で、3人の女性に対する魔女告発から始まった魔女狩りは、わずか数ヶ月で同植民地北東部のエセックス郡全域に広がり、絞首刑、獄死や拷問死も含め20人以上の死者を出した。数人の少女たちの異常行動をきっかけとする、この集団ヒステリーは、1950年代に吹き荒れたマッカーシーイズムの本質とも重なり、アーサー・ミラーがこの事件を題材に戯曲『るつぼ』を執筆したことはよく知られている。 
 本報告では、複数の先行研究によりながら、この事件の背景にある英本国・植民地関係(名誉革命の余波)、農村共同体内部の経済的・政治的軋轢、植民地における先住民戦争、事件に大きく関わった人物(没落した砂糖プランターから転身したパリス牧師とその奴隷で先住民のティテュバら)の出自などを明らかにしながら、この事件を概観した。さらに、同じ共同体の中で告発者と被告発者として対立したセイラム・ヴィレッジと、裁判の舞台にこそなれども、住民に当事者が少なかったセイラム・タウン(現マサチューセッツ州セイラム)が、その後、この事件をどう顕彰していったのか、1992年の300周年記念行事を中心に触れた。

第二報告
「ダニエル・デフォーと超自然―悪魔・魔術に関する真実と迷信―」杉田望(京都大学大学院)

本報告では、『悪魔の政治史』『魔術体系』におけるダニエル・デフォーの悪魔・魔術に関する見解を検討した。デフォーは、魔女迫害の勢いが衰退し、悪魔に対する信憑性も薄れていった時代を反映し、悪魔の存在を認めたうえで人間の精神のうちに内在化された悪魔像を『悪魔の政治史』によって描き出した。『魔術体系』では、悪魔の手下という役割を失った魔女や魔術師はその姿を消し、魔術師や占い師を名乗るペテン師、詐欺師だけが残されたと説明した。こうしたデフォーの悪魔観や魔術観が、オカルト関連の著作以外にも反映され、『ペストの記憶』では、予言や占いなどを迷信とみなす一方で、神の超自然的な力の現世への影響力については真実であるという見解を示していた。今後も、デフォーの超自然に関する認識と、真実と迷信の区別をどのように行っているかの検討をすすめ、デフォーの超自然観はこれまでの近代人デフォーの評価にいかなる影響を及ぼすのかを明確にしていく。

次回の研究会は、3月20日(水)関西大学で開催の予定です。

第13回学際魔女研究会のお知らせ

以下の要領で、研究会が開催されます。どうぞ奮ってご参加ください。

日時 2018年11月25日(日)13:30~(開場13:00)
場所 愛知県立大学サテライトキャンパス15d教室
〒450-0002 名古屋市中村区名駅4丁目4-38
(愛知県産業労働センター「ウインク愛知」15階。地下街のユニモールを東方面に歩いて行くと右側にあります。JR、地下鉄、名鉄、近鉄「名古屋駅」徒歩約5分)

13:30~15:00
久田由佳子氏(愛知県立大学)
「1692年セイラムの魔女裁判とその遺産」

~・~・~休憩~・~・~

15:15~16:45
杉田望氏(京都大学大学院博士後期課程)
「ダニエル・デフォーと超自然―悪魔・魔術・幽霊に関する真実と迷信―」

16:45~17:30
全体討論