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第16回研究会

12月21日、近畿大学で第16回研究会が開催されました。

報告者急病のため、予定されていた報告からタイトル、報告者が変更となりました。
報告の要旨は以下の通りです。

「名誉をめぐる攻防―「魔女」の名誉棄損訴訟と司法利用の戦略」小林繁子(新潟大学)
 本報告は刑事裁判としての魔女裁判ではなく、魔女の嫌疑をかけられた者が反撃する機会として名誉棄損訴訟を利用したことを取り上げた。「魔女」「妖術使い」といった悪口は名誉が貴重な社会資本であった近世において看過しえない侮辱だった。これに対抗する手段として①水審問、②簡易的罰金手続き、③教会法上の雪冤宣誓、④名誉棄損訴訟といった選択肢があった。これらの方法を比較検討し、17世紀に行われた名誉棄損訴訟の事例を紹介した。そこから、魔女という絶対的他者を作り出す魔女裁判に至ることを名誉棄損訴訟によって回避し、背景にあった紛争をめぐっても当事者が和解に至る方法があったことを提示した。課題としては、魔女裁判件数の増減に名誉棄損訴訟のそれは連動したのかしなかったのか、「司法利用」の観点から臣民がどの裁判所に訴え出るのか、それをどのように選択しているのかをより多くのケースから検討する必要性、「魔女」以外の名誉棄損訴訟との比較の必要性、合理的な説明に終始するのではなく魔術的世界観を含め検討する意義などがディスカッションの中で指摘された。

*予定されていた報告者急病の連絡を受けての代理報告。これは2018年9月に早稲田大学で行われたヨーロッパ中世・ルネサンス研究所のシンポジウムで報告したのと同一内容のものであり、論文集所収の論文の形で刊行されています。小林繁子「名誉をめぐる攻防:「魔女」の名誉棄損訴訟と司法利用の戦略」松本尚子編『法を使う/紛争文化』(国際書院、2019年)、89-112頁。

次回研究会は2020年4月頃を予定しています。